志望動機のAIチェックで分かること
志望動機の文章を貼り付けて判定すると、全体のAI率(0〜100)と、文ごとの要確認表示が出ます。AI率は、文章が生成AIの出力に近い言い回しや構成になっている度合いを示す参考値です。要確認の表示は、どの文がその数字を押し上げているかを示します。
志望動機は、ESの設問の中で最もAIっぽくなりやすい文章です。企業名と事業内容をChatGPTに渡せば、それらしい志望動機が数秒で出てきますが、出てくるのは企業HPの文言を言い換えて「共感しました」と締めた文章です。本人の経験が入っていないため、文単位で見ると要確認が多くなります。
ChatGPTで下書きした志望動機、企業HPを見ながら自分で書いた志望動機、複数社に使い回している志望動機のいずれでも使えます。判定後に要確認の文を直し、再判定して数字と文がどう変わったかを見てください。
AI率と信頼度の読み方
AI率は、あなたがAIを使ったかどうかを証明する数字ではありません。AI検出は確率スコアであり、人が書いた文章でも、企業HPの表現をなぞった文や「貴社の〜に共感し」といった定型が続けば高く出ます。志望動機は人が書いてもこの条件に当てはまりやすいので、数字が高いこと自体より、どの文が拾われたかを見てください。
結果には信頼度(low・medium・high)が付きます。400字未満の文章は信頼度がlowになります。志望動機は400字が目安なので、設問どおりの長さで判定すると信頼度はlowかmediumになるのが普通です。信頼度lowのときはAI率のぶれが大きいため、文単位の要確認表示を中心に見てください。削る前の長い下書きで判定すると信頼度は上がります。
同じ文章を何回判定しても結果は変わりません。書き直す前と後で比べたときに、初めて意味のある数字になります。
志望動機がAIっぽく見える3つの特徴
AIが書いた志望動機には、採用担当者が数行で気づく共通点があります。チェッカーが要確認として拾う文と、読む側が「HPを写しただけだ」と感じる文は、かなり重なります。次の3つに当てはまる文があれば、AI率の数字に関係なく見直してください。
- 企業HPの文言の言い換えになっている。「お客様第一」「挑戦を続ける社風」「社会課題の解決」など、採用ページや企業理念に書かれている語が、ほぼそのままの意味で並んでいる。
- 「貴社の理念に共感し」「貴社の〜という姿勢に魅力を感じ」の定型で始まり、何に、なぜ共感したのかが本人の経験と結び付いていない。
- なぜ他社ではないのかが書かれていない。同じ業界の別の会社の名前に置き換えても、文章がそのまま成立する。
なぜ他社ではないのかが抜ける理由
3つの中で最も見落とされやすいのが、他社との違いです。生成AIは企業の公開情報から志望動機を組み立てるため、その企業にしか当てはまらない理由を書けません。公開情報は競合他社も似たことを書いているからです。結果として、「貴社の〜に共感した」という文は書けても、「同業の他社ではなく貴社である理由」は空白になります。
採用担当者がまず見るのはこの空白です。志望動機を読むときに頭にあるのは「この人は他の会社にも同じことを書いているのではないか」という問いで、他社との違いが書かれていなければ、使い回しだと判断されます。ブンナビ(キャリアパートナーズ)の27卒AI活用調査(2026年7月)では、志望動機の作成にAIを使った学生が69.9%でした。志望動機の7割近くがAIを経由しているなら、企業に届く志望動機の多くは、この空白を抱えています。
AI率が高く出た志望動機の直し方
言い回しを変えてAI率を下げる作業は勧めません。「共感し」を「心を動かされ」に変えても中身は同じで、面接で「具体的にどの点ですか」と聞かれたときに答えられない文章が残るだけです。直すべきなのは、企業HPから持ってきた部分を自分の経験に置き換えることです。
まず、要確認になった文の中から、企業HPに書いてある内容をそのまま使っている文を見つけてください。次に、その内容と自分の経験が交差する場面を一つ思い出します。その企業の製品やサービスを使った経験、説明会やOB訪問で聞いた具体的な話、インターンで見た業務の一場面、その企業が扱う課題を自分が別の場所で経験したこと。どれでも構いません。固有名詞(製品名、聞いた相手の部署、訪問した日や場所)と数字を入れて、その場面を一文か二文で書きます。
最後に、同業他社との違いを一文で書きます。「同じ業界で〜を扱う会社は複数ありますが、貴社だけが〜をしている点が、私の〜という経験と重なります」という形です。この一文があるだけで、文章は使い回しの疑いから外れます。
書き直したら再判定してください。Uravationの判定ログ調査(2026年7月18日〜9月5日、72,971件)では、60分以内に書き直して再判定した36,038組のうち、AI率が5pt以上下がったのは35.9%で、31.6%は上がっていました。言い換えだけの修正では数字は動かず、悪化することもあります。企業HPの文言を自分の経験に置き換える修正のほうが、結果として数字も動きます。
志望動機の均質化に対する企業側の動き
マイナビの企業調査(2025年)では、学生の生成AI利用を実感している企業は12.3%で、前年から7.7pt増えています。一方で多くの企業は「対策する予定はない」と答えています。この数字だけを見ると、企業側は気にしていないように見えます。
しかし、動いている企業もあります。ロート製薬は2025年12月、2027年入社の新卒採用でESによる書類選考を廃止し、「Entry Meet」を導入すると発表しました。理由として挙げたのは「生成AIの普及による応募書類の均質化」です。AIを使ったことを罰するのではなく、書類で差がつかなくなったので書類を見るのをやめる、という判断です。
この動きが示しているのは、志望動機で問われているのが「AIを使ったかどうか」ではなく「他の応募者と同じ文章かどうか」だということです。AIチェックで要確認になった文は、他の応募者と同じになりやすい文でもあります。数字を下げることではなく、その文を自分にしか書けない内容に置き換えることが、書類でも面接でも評価につながります。
判定の限界と誤判定について
AI検出には誤判定があります。人が書いた文章をAIと判定する誤検出について、Turnitinは文書単位で1%未満、文単位で約4%の誤検出率を公表しています。このツールも同じ性質を持ち、文単位の表示は一定の割合で外れます。要確認が1文だけなら、短くて一般的な文がたまたま拾われただけかもしれません。
志望動機は、人が書いても誤判定が出やすい文章です。企業の正式名称や事業内容を正確に書こうとすると、どうしても企業HPの語をそのまま使うことになり、その文は要確認になりやすくなります。事業内容を説明する文が要確認になっても、それ自体は問題ではありません。その後に続く「だから自分は」の部分に経験が書けているかを見てください。
逆に、AIの出力を手直しした文章が低く出ることもあります。AI率が低いから問題ない、ではありません。確認すべきは、企業HPに書いていない情報が入っているか、他社の名前に置き換えると文章が壊れるか、面接で「なぜ共感したのか」を自分の経験で答えられるかです。チェッカーはそのための目印にすぎません。
