ESにAIを使うとバレる? 人事が気づく場面と企業の本音
ESにAIを使ったかどうかを、ツールだけで断定することはできません。ただし、文章が他の応募者と似通ってしまうこと、面接で深掘りされたときに答えに詰まることで、人事は気づきます。この記事では、企業側と学生側の調査データ、人事が気づく3つの場面、AIを使ってよい範囲と避けるべき範囲を整理します。
提出前に、自分の文章のAI率を確認する
ESのAI率を判定する結論:ツールで断定はできないが、人事は気づく
先に結論を書きます。ESにAIを使ったかどうかを、AIチェッカーのようなツールだけで断定することはできません。検出ツールが出すのは確率であり、Turnitinのような代表的なツールでも、文書単位で1%未満、文単位で約4%の誤検出率を公表しています。人事がツールの数値だけを根拠に「この学生はAIを使った」と断じるのは、企業側にとってもリスクがあります。
それでも「バレる」と言われるのには理由があります。ひとつは、多くの応募者が同じAIで推敲した結果、文章の構成や言い回しが似通ってしまうこと。もうひとつは、面接で文章の中身を深掘りされたときに、本人が書いていない細部を答えられないことです。この2つは、ツールがなくても経験のある採用担当者なら気づきます。
つまり、問題はAIを使ったこと自体ではなく、AIに任せた結果として「自分の経験が自分の言葉で書かれていない」状態になることです。この記事では、企業側と学生側の調査データを見たうえで、人事が気づく場面と、使ってよい範囲を具体的に整理します。
企業側の本音:対策する予定はない、が多数派
マイナビが2025年に実施した企業調査では、学生の生成AI利用を実感している企業は12.3%でした。前年から7.7pt増えてはいるものの、まだ1割強です。そして、多くの企業は「対策する予定はない」と回答しています。
この数字は2つの読み方ができます。ひとつは「企業はまだAI利用を問題視していない」という楽観的な読み方。もうひとつは「企業はESの文章そのものを以前ほど重視しなくなっている」という読み方です。後者のほうが実態に近いと考えられます。文章で差がつかなくなった以上、企業は面接やその他の選考で見極めるしかなく、ESはあくまで入口の確認資料になりつつあります。
したがって、ESで「バレるかどうか」を心配するより、ESに書いたことを面接で自分の言葉で語れるかどうかのほうが、選考結果には直結します。
学生側の実態:8割が使い、7割がESの推敲に使う
学生側のデータも見ておきましょう。マイナビ キャリアリサーチLabの「2026年卒 大学生キャリア意向調査4月」(2025年5月)によると、AIを利用したことがある学生は82.7%で、2024年卒の39.2%から2年で2倍以上に増えました。就活での利用は66.6%、利用目的の1位は「エントリーシートの推敲」で68.8%、「ES作成」も40.8%にのぼります。
ブンナビ(キャリアパートナーズ)の「27卒AI活用調査」(2026年7月)では、さらに進んで、ガクチカ作成にAIを利用した学生は86.0%でした。項目別では「自己PR・ガクチカの作成・添削」が77.4%、「志望動機」が69.9%です。
注目したいのは、同じ調査でAI利用者の37.2%が「AIっぽい文章になってしまった」と答え、18.6%が「面接で深掘りされた際に不安を感じた」と答えていることです。使っている本人が、自分の文章の均質化と、面接での弱さを自覚しています。「バレる」という不安の正体は、ここにあります。
提出前に、自分の文章のAI率を確認する
ESのAI率を判定するロート製薬のES廃止が示す方向
ロート製薬は2025年12月、2027年入社の新卒採用でESによる書類選考を廃止し、「Entry Meet」という形式を導入すると発表しました。理由として挙げられたのは「生成AIの普及による応募書類の均質化」です。
これは「AIを使った学生を見抜く」方向ではなく、「ESで見抜くことをあきらめる」方向の判断です。文章で差がつかないなら、文章以外で見る。企業がこの方向に動くほど、ESに書いた内容を対面で深掘りされる機会は増えます。
すべての企業がすぐにESを廃止するわけではありません。しかし、ESの文章の出来栄えより、その裏にある経験の中身を問う流れは、今後強まると考えておいたほうが現実的です。
人事が気づく3つの場面
ツールを使わなくても、人事が「この文章は本人の言葉ではなさそうだ」と感じる場面は、おおむね次の3つに絞られます。
3つに共通するのは、「AIを使ったかどうか」ではなく「本人の経験が本人の言葉で書かれているかどうか」を見ているという点です。
- 定型表現が多い。「貴社の理念に共感し」「多様な価値観を持つ仲間と協働し」「この経験を活かして貢献したい」といった言い回しは、AIが生成したESにも、AIで推敲したESにも共通して現れます。同じ日に何十通も読む人事は、この繰り返しに敏感です。
- 具体性が欠けている。「困難を乗り越えた」とあるのに、何がどう困難で、誰と何をしたのかが書かれていない。数字や固有名詞、失敗の経緯がなく、どの学生にも当てはまる文になっている。これはAIが「無難に整える」ときの典型的な結果です。
- 面接の受け答えと乖離がある。ESでは論理的で整った文章なのに、面接でその出来事について聞くと、文章に書いた以上のことが出てこない。あるいは、文章の表現を本人が覚えていない。人事が最も確信を持つのはこの場面です。
使ってよい範囲と、避けたほうがよい範囲
AIをまったく使わないことが正解ではありません。マイナビの調査が示すように、すでに7割近い学生が就活でAIを使っており、使うこと自体で不利になる状況ではないからです。線引きは「経験の中身を誰が出したか」で決まります。使ってよいのは、次のような範囲です。
避けたほうがよいのは、経験そのものをAIに補わせる使い方です。「ガクチカを書いて」と頼んで出てきた出来事をそのまま使う、エピソードの細部をAIに考えさせる、志望動機の理由をAIに作らせる。これらは、面接で深掘りされたときに答えられない部分を自分で作っていることになります。
AIが出した文章を使うなら、少なくとも固有名詞、数字、失敗した場面は自分で書き足してください。それがないESは、人事が気づく3つの場面すべてに当てはまります。
- 構成の相談。設問に対してどの順番で書くか、どの経験を選ぶかを壁打ちする使い方。
- 誤字脱字や文法の確認。自分で書いた文章の表面的な整え。
- 字数の調整。自分で書いた文章を400字に収めるときの候補出し。ただし、削られた部分が自分の意図と合っているかは必ず確認します。
提出前に確認しておきたいこと
提出前のチェックは、AI率の数値を下げるためではなく、自分の文章になっているかを確かめるためのものです。次の順番で確認してください。
当サイトのESチェッカーは、設問ごとの文章を想定して文単位の判定を返します。数値を見て全文を作り直すのではなく、高く出た文に場面や数字を足す。それだけで、面接でも語れるESに近づきます。
- ESの各設問について、文章に書いていない細部を3つ以上話せるか。話せないなら、その設問は自分の経験が薄い状態です。
- 「貴社」「貢献」「活かして」「多様な」など、どのESにも出てくる語が、1設問に3回以上使われていないか。
- 一文が80字を超える文が連続していないか。長く整った文の連続は、均質な印象を強めます。
- AIチェッカーにかけて、文単位でどこが高く出るかを確認する。高く出た文は、たいてい上の3点のどれかに当てはまります。